2025年6月、かねてから気になっていたANAの訓練施設 ANA Blue Base の見学ツアーに参加してきました。ツアーの存在は知っていたものの、基本は平日開催のみで土日は不定期開催のためなかなか難しいなぁと諦めていたのですが、ANAの instagramで土日開催の案内があり、一も二もなく申し込みました。
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最寄駅は京急電鉄 穴守稲荷駅
見学ツアーが行われるのは ANA Blue Base。この訓練施設の建物自体が ANA Blue Base という名前です。初めて降り立つ京急電鉄の穴守稲荷駅から徒歩5分ほど。手前にはヤマト運輸の羽田クロノゲートもあり、普通の街とは趣が異なります。

受付はツアー開始の20分前から
わたしは14:40からの回を予約したので、建物に入れるのは14:20から。受付で名前を告げ、本人確認証を提示すると、名刺サイズのチケットをもらいました。こちらが本日の “搭乗券” になるとのこと。

受付横には旅客機の模型や、ANAの沿革を学べるブースが用意されており、開始まで各々ここで時間を潰します。

ANAの制服に着替えられるARのスクリーンも用意されていましたが、こちらは正直あまり精度が高くなく、みなさん苦戦していました。
本格的な搭乗アナウンスでツアー開始!
時間になると、搭乗開始のアナウンスさながらのアナウンスがあり、わらわらと搭乗ゲートを通過してエレベーターで3階へ。

エレベーターを降りるとまず見えてくるのがANA Blue Base専用のロゴ。ロゴに込められた思いなどの説明がありました。

オープニング動画
ツアーの開始は短いオープニング動画から。ミニシアターに座り、半円状に映るスクリーンでツアーの注意事項やANAに携わるスタッフの概要を学びます。
スターウォーズラッピング機
ミニシアターを出ると見えてくるのがSTAR WARSコラボのラッピングジェット。通称「たくあん」。

ラッピングジェットを日本で最初に導入したのはANAらしく、こちらの模型にはなんとアンソニー・ダニエルズの直筆サインが!

直近では大阪万博のラッピングジェットも制作し、色が歯磨き粉のようということで、搭乗客に歯磨き粉を配ったりもしたそうです。
訓練施設見学
ここからは実際に使われている訓練施設の見学!合間あいまに ANA の6職種の説明もありました。撮影はNGのため、文字のみでお届けします。
訓練施設① チェックインカウンター
空港のチェックインカウンターを模した設備。わたしたちが見た時は新入社員が “Basic” というカリキュラムの訓練中でした。遠目ながら確かに初々しい感じが。
年によるそうですが、昨年実績だとグランドスタッフは入社後34日間の訓練を経て現場に出て、半年後にまた訓練。その後現場に戻り、さらに8ヶ月後にまた訓練…というように訓練と現場を行き来しながら成長していくとのこと。
グランドスタッフのはなし
最初の職種紹介はグランドスタッフについて。グランドスタッフは胸元にバッジをつけている人がいるそうで、手話バッジや言語バッジのほかに、ANA Blue Base でのインストラクター資格を持つ人はシルバーのバッジ、接遇コンテスト出場経験者がつけるゴールドのバッジがあるそう。これまで意識して見たことがなかったので、次回空港に行く時はしっかり見てみよう。
訓練施設② 緊急着水プール
少し歩くと見えてくるのが緊急着水の訓練に使われる巨大なプール。スライダー訓練を行うため機体模型も置かれていました(B787とB777)。
緊急脱出用のボートが開いた状態で置かれていたのですが、B787用は80人、B777用でも60人が乗れるのだそう。しかも、畳まれた状態からボートが完全に開くのにかかるのはたったの6秒!安心感があります。
客室乗務員(CA)のはなし
一見するとグランドスタッフの制服と同じ CA の制服。違いは滑走路をイメージしたラインが一本スッと通るスカート(グランドスタッフの制服では、襟の後ろやネクタイにラインが入っている)。
保安要員の側面も強い CA は、1年に1度必ず訓練を受ける必要があるのだそう。また CA 内でも資格があり、例えばファーストクラスを担当するにはそれ相応の資格がいるんだとか。
訓練施設③ 客室内訓練
ANA Blue Base でたぶん1番大きな部屋にあったのは、4機の機体。うち1番小さい機体は実際に使われていたB737で、訓練用に改造されています。
1番左にある機体は日本で初めて導入された訓練機で、衝撃や上空の風を再現可能。消火、減圧、緊急着陸・着水、接客などの訓練を行うそうです。
見学中にも訓練中の CA さんがいらっしゃり、見学者に気がついて手を振ってくれました。昨年の CA 新人研修は4ヶ月だったそう。接客のみならず保安訓練もあるためなかなか長いですよね。
なお、緊急避難訓練は CA のみでなく ANA スタッフは全員受ける必要があるのだとか。というのも、乗客として乗っていた際に緊急着陸することになった場合、ANA 職員はヘルプに入れるようにするためだそうです。
グランド・ハンドリング(グラハン)スタッフのはなし
滑走路(外)で作業をされていることから、男性職員が多いイメージのグラハンスタッフですが、最近では女性職員も増えてきているそうで、関西国際空港(KIX)ではなんと半数が女性とのこと。わたしは読んだことがなかったのですが「ブルーフライト~グラハン女子物語~ 」という漫画も出ているんですね。これからますます人気になりそう。
貨物スタッフのはなし
旅客機というよりも ANA Cargo(貨物機)の話がメインでありました。馬を乗せるなら80頭は優に乗せられる Cargo機。飛行機のエンジンやレーシングカー、錦鯉やパンダ、はたまた外交文書などさまざまなものを運びます。
貨物スタッフの方は運ばれる部品を見て、あそこの会社が今度こういうのを作るんだな〜といったことがなんとなくわかるらしいです。
訓練施設④ 機体の整備
ANA Blue Baseには機体訓練の整備場もあります(Blue Hangerの方のイメージでしたが、訓練はやはり全部 Blue Base なのでしょうか)。
訓練場中央には巨大なB787( 6トン)とB767(4.2トン)の巨大なエンジンが鎮座しており、遠目からでもその大きさに圧倒されます。B787とB767のエンジンでは製造時期に30年の差があり、年月を経てどのように改良されたかを見ることができます。
整備士さんが使う専用の作業台は特注品らしく、細部にまでこだわりがあるそう。
整備士のはなし
整備士さんがかぶっているヘルメットは、色で立場を表しているそうです。配属1〜2年目は黄色、3年目からは白地に紺色のライン、さらにチーフになると白地に緑色のラインのヘルメットとなります。
またヘルメットとは別に帽子とワッペンの色も整備士の専門性を表しているそうです。ネイビー→ブラック(管理職)→グリーン→ブルー→えんじの順で認定され、えんじともなると持っているのは4,000人中8人!
1万点以上ある工具を使いこなし、1/1000インチの精度にこだわる。まさに職人ですよね。一等航空整備士資格の取得にかかる年数は4〜5年と言われており、以降機種を追加するごとに1年ずつかかるそうです。
訓練施設⑤ 心肺蘇生
こちらはサッと通り過ぎた程度ですが、人体模型がいくつも置かれている会議室のようなお部屋もありました。大人、子供、赤ちゃんの模型でそれぞれ心肺蘇生等の訓練を行うそうです。
運航乗務員(パイロット)のはなし
6職種の中で特に訓練に年数がかかるのがパイロット。資格なしで入った場合、2年の地上勤務(部署ローテ)ののちようやくパイロットとしての訓練が始まるそう。乗客・乗員の命を預かる最高責任者であるため、すべてを把握している必要があるからでしょうか。
3年の副操縦士昇格試験用の訓練ののち、試験に合格すれば晴れて副操縦士として勤務できます。その後10年ほど副操縦士として勤務して初めて、5ヶ月の機長昇格訓練を受けることができ、合格者のみ機長に昇格となります。
かかる年数は人によってもかなり異なるそうで、例えば航空大学校を卒業してすでに運航資格を持っている人などは、半年の地上勤務ののちすぐに副操縦士訓練に入れたりもするそうです。
訓練施設⑥ フライトシミュレータ
最後に見た訓練施設はフライトシミュレータがあるお部屋A320が2台とB737が1台、それにボンバルディア(プロペラ機)のシミュレータが1台ありました。
シミュレーション訓練は1回約2時間もあるらしく、使用中の躯体は外から見ても前後左右に揺れていました。
リアル再現!フライトシミュレータの動画体験
本物のフライトシミュレータに入ることはもちろんできませんが、その代わりフライトシミュレータでの訓練をシミュレートした動画(?)のようなものが用意されており、とても面白かったです。
舞台は雨で視界不良の日、夜間の羽田着陸のシミュレーション。高度を落とすところから実際にランディングするところまでが記録されています。左のスピーカーからは機長の声が、右からは副操縦士の声が聞こえ、本番さながら。管制とのやりとりも録音されています。
個人的に1番楽しかったのがこのシミュレータ体験。かなりギリギリまで滑走路が見えない中着陸しているんだ!ということもわかり、そんな中安全運航を実現しているパイロットさんに今後より感謝ができそうです。
旅の終わりはExperience ANA で 各種体験・記念撮影
ここからは撮影解禁エリア。ANA のチェックインカウンターやビジネスクラス座席、コックピットなどを見て回ることができます。

ギャレーや飲み物ワゴンなどもあり、ほんの少しだけ CA さん気分を味合うことも。わたしは乗ったことがありませんが、フライングホヌでのみ着用されるというエプロンもあったりして、束の間の写真撮影大会。

もちろん一度も入ったことのない操縦席。ボタンがあり過ぎてびっくり。「ハワイで親父にセスナの操縦を習った」ことのあるコナンくんででも、初見で大型機を操縦できるのはやはり不可能では…?(しかも実際は遠隔でナビゲートしているだけ)

実際に席に座ってみると、思ったよりも座席が広くなくて、何時間もここに座り続けていること自体がすごいなーと思ってしまいました。


整備士さんの訓練施設にもあった機体のタイヤが展示されており、自由に触ることができます。ゴムとは思えない硬さです!

クロージング動画
15分くらい思い思いに過ごしたらいよいよ旅も終了。オープニングとは別のミニシアターに入り、2分ほどのクロージング動画を見ます。
参加者のみが購入可能なお土産も
1階に戻ってからは、自由に帰ってOK!入口のお土産はツアー終了後に購入が可能です。ここでしか売られていないものもあり、ちょっとしたレア感。

飛行機好きなら絶対に満足できる内容です。ご興味がある方はぜひ行ってみてくださいね。
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7年間の会社員生活ののち、2023年からフリーランス。会社員時代は年に5~8か国を旅行。フリーになってからは長期滞在で暮らすように旅行中。23年6月バンコクに新築コンドを購入。一児の母(23年・24年は妊娠・出産に伴い更新少なめ)最新の旅の写真はInstagramで投稿中。